「起業について相談したいと思っても、どんな人が聞いてくれるのだろうか…」と不安に思ったことはありませんか?そんな不安を少しでも和らげようと、「みやぎの創業支援者インタビュー」では、宮城県各地で起業家の支援を行う方々の人物像を明らかにしていきます!
第6回目となる今回は、仙台市を拠点に活動する阿部大さんにお話しを伺いました。
東北を代表するサーバー(飲食店で接客をする人)であった阿部さんが、飲食店を支援する側になった経緯とその想いを伺いました。
老舗計画株式会社で、どういった支援をされているか教えてください
老舗計画株式会社は、飲食店専門のコンサルタントです。
飲食店の開業を始め、経営改善・経営支援、接客改善や商品設計の見直し、原価率の管理、あとは一番大切なところでお店自体のコンセプトの見直しなど、飲食に関わることは全てやります。ご相談の7割くらいが、経営改善や経営支援ですね。
あとは・・・色々ありますが、わかりやすいところだと、メニューブックを作ったり、レイアウトを変えたり、メニューのネーミングを変えたり。そういうちょっとしたことでも、お客様1人あたりの売上額が変わるんですよね。
僕がお店のコンセプトを作る時は「誰の・どんな利用動機に・何を・どのように提供して・どんな体験価値を作るか」と5段階で作ります。それが、店舗の立地条件や地域から求められているかどうか、オーナーさんのスキルと噛み合っているか、そしてそれぞれとリンクして軸が通っているか。その軸が、お店のカラーになると思っています。
「結婚式の二次会で行きたいお店」「1人でゆっくり週末に飲みたいお店」のように、その状況になった瞬間に「ここ」と浮かぶ。そんなお店はそれだけで強いんですよね。そういうお店になるには、コンセプトからしっかり作る必要があります。

<阿部大 | プロフィール> *老舗計画株式会社より
ホテル専門学校卒業後、仙台市内のホテルレストランにてオープニングスタッフとして勤務、初年度よりクレーム対応とホールの中心的役割を担う。その後カフェ、大手企業の保養施設、イタリアンレストラン等を経て2003年にダイニングバーを開業する。
日本酒バー、焼き鳥屋と店舗拡大するも東日本大震災にて規模縮小。後に客席10席、接客特化型という全国でも珍しいジャンルを開業し密度の高いサーブをテーマに営業する。
2012年第七回S1サーバーグランプリ全国ファイナリストに選出され、東北を代表するサーバーとなった後、飲食店を廃業しコンサルタントとして全国で活動を開始。現在年間100件以上のコンサルティングやセミナーを全国で行っている。
飲食業を支援する上での、難しさや苦労はありますか
飲食店に限らず、実店舗のある業界では特にそうなのですが、「建物の構造上、これ以上オペレーションの改善ができない」という場所もあります。
例えばカウンターだけのお店で、カウンターからホールに抜ける動線が1ヶ所しかないような構造の場合、そこを行き来するしかないのでボトルネックになります。1人で切り盛りしているのであればいいですが、アルバイトさんを入れた場合には、どうしても時間的なロスが出てきます。そうなると、建物の設計段階で直していけばよかった、となるので、結局は創業のところからしっかりと手をかけた方がお金も残りやすいです。
コンサルティングを始めた当初は、接客を改善することで経営を改善するような支援がほとんどでしたが、飲食店経営は特に開業の段階から関わっていった方がお互いに幸せだな、と気づいて、開業支援の比率も高めているところです。
阿部さんの支援の特徴を教えてください
僕の創業支援は、初期投資を抑えて転ばないようにする・転びにくくするのが第一のテーマです。初期投資で莫大なお金をかけるとその支払いだけで終わってしまいますし、やりたいことを実現させるためだけのお店になって、収益バランスが崩れ、結果として事業継続が難しくなる・・・という本末転倒な状況になる場合が多く見られます。
飲食店の場合、イニシャルコストにあたる設備投資の負担が大きいです。内装を変える、什器を購入する、食器を買う・・・ある程度仕組みや売れる法則がわかっている、もう何店舗も出している、という人が初期投資にお金をかけるのはいいんですけど、何も右も左もわからない状態で、1店舗目に「数千万円かけます!」という人が結構多くて。
僕自身、飲食店を開業して廃業しています。
廃業って、やっぱりしんどいですよ。廃業の手続きもものすごく大変だし、前向きになれないけどやらなくてはいけなくて。何が一番辛いって、自分が潰したお店に別のお店が入っちゃうんですよ。そうすると「そこ、俺の店だったはずなんだけどな」みたいな気持ちを、お店の前を通るたびに思います。最愛の娘を知らない誰かに取られたような(笑)。廃業して飲食のことを嫌いになる人も多いので、飲食のことをずっと好きでいてもらえるためにも、僕みたいな人間が関わっていって、お手伝いして、人生とともに末長く飲食を楽しんでもらえるようなお店が作れたらいいな、と思っています。
小さな個人店がたくさん増えると、日本ってもっと面白くなるんだろうなって本気で思ってます。個人店の多い街って、その街自体がエネルギーを生み出しているんです。そして、アルコールを飲まなくても、その場の空気を浴びて元気をもらえるっていう人も、ある程度の割合でいます。そういう人たちが元気をチャージできる場所、それが個人店かな、と。
僕の個人店の価値観は、オーナー自身が「これが大好きなんだよ」っていうものを、お客さんも「これいいですね」って共感しあえる、趣味の部屋、部室みたいな感じであってほしいです。「好きで満ちている場」って心地いいんですよね。僕たちがそこで戦うのってのはそこのプラスアルファの体験のところですよね。
特にこの2年間って、僕は本当に外食の価値とはなんぞやっていうのを、お客様を含めて振り返れた時間だったのでは、と思っています。ただ単に美味しい料理を出す、美味しいお酒を飲ませるだけじゃなくて、それプラス、オーナーも楽しくてお客様も楽しい、そういうお店作りを支援したいですね。

阿部さんが飲食業界に関わるまでのことを教えていただけますか
学生時代は不登校で、学校にはほとんど行っていませんでした。
親からは「手に職をつけろ」って言われて、名前で選んだのがホテル専門学校でした。
卒業後、一番最初に働いたホテルで、僕、緊張しすぎてトレーで持っていったコップ10杯分のビールをお客さんにかけちゃったんですよね。先輩からも「お前、もう(表に)出る必要ないよ」って言われたし、ずっと裏方をやってました。ただ、人に迷惑をかけたままで終わるのは嫌で仕事は続けていて、ある程度仕事もできるようになりました。
なるべく人に会わないところで仕事をしていましたが、仕事はしっかりする、というところで評価してもらえて、メインダイニングの配属になりました。
そこでも、緊張しすぎて初日に貧血で倒れました(笑)
その後、ホテルや保養所で働いて・・・いつかは独立したい、という気持ちはあった中で、ちょうど先輩から、レストランを立ち上げるから、手伝ってほしいって言われて・・行ったら個人経営の熱量にまず圧倒されて。そこを手伝いつついろんなことがあって、泥臭い、人間臭いこともたくさんありました・・・そこで働いてからやっぱり「自分の店を出そう」って思っちゃったのね。
そのタイミングで「うちの地元の駅前に空き物件がある」っていう話を聞いて、自分1人でお店を開きました。求人広告を出して集まってきた人を雇って・・・メニューの作り方もわからないのに(笑)僕、わかると思ってしできると思ってたんですけど、始めたら全然、何もかもわかってなくて。売り上げの管理、原価管理も全然わかってなくて。

それでも、スタートしちゃったから走り続けて、お客さんや常連さんつくようになって・・・でも、忙しくなればなるほど赤字で。それでも売り上げがあるから融資が受けやすくなって、2店舗目・3店舗目を出せちゃうわけです。でも、そんな状況だったのでスタッフに合わせる顔がなくて逃げていて、最終的には自分以外「年末で全員退職します」って状況になって。その後ひとりで1年は頑張ったけど、翌年震災があって、そのお店は畳みました。
その後、接客のオペレーション周りを手伝ってほしい、改善してほしい、っていう依頼が増えてきて、今に至る感じです。
行き当たりばったり感は否めないのですが(苦笑)ただ、自分で勉強するようになりました。自分が深く失敗した経験があるから「こうなると失敗する」「こういう予兆があると、こんなトラブルが起きる」ってわかるようになりました。その感覚は、創業支援にとても役立っています。人よりも多くの失敗をしているから、できるお仕事もあるんだろうな、と思いますね。
最後に起業・開業を考えている方へのメッセージをお願いします
起業・開業は、自分の足で立って、仕事を自分で作ること。今、いろいろ大変な時代になってきたけど、先がわからないからこそ、本当に一番信用したい自分っていう存在と一緒に、自分をとことんまで高めたり、「俺こんなことまでできるんだ」って感じられるのは、起業したからなのかなあとは思います。もちろん企業に就職しても得られる感覚ではあると思いますが、喜びや感動の度合いは違うかなと思います。
人が一生に食べる食事の回数って大体決まってるんですよね、1日3食なので。自分のお店で提供した食事がその人の血となり肉となり、そして接客で、心までしっかりとサポートできるって素敵ですよね。外食の価値はそこにあると信じています。
なので、飲食が好きで、人と触れ合いたくて、お店のカウンターの中で生きていきたいと思った人はやっぱり連絡いただければ、と思います。お店はその人の舞台だから、そこでずっと一生かけて踊り続けたいという方を、伴走型でお手伝いしていきます。

阿部さんのYouTubeチャンネル「飲食店応援チャンネル」 では、支援したお店のレポート動画や、接客時のトレイの持ち方を始め、サービス時のパフォーマンスを上げる動画を公開しています。