CawaCafe 星野知宏さん

宮城県で開業した先輩起業家の、特にその場所で起業を決断した理由を深堀りするコーナー。
第4弾は、角田市から移転し、丸森町で起業された『CawaCafe(カワカフェ)』の星野知宏さんをご紹介します。
起業を決断されるまでの経緯、顧客に関する気づきの数々、起業後にしか知り得なかった学び、都市部と地方部の経営構造の違いなど、貴重な学びの数々をお話いただきました。起業を志すたくさんの方々、特に店舗型ビジネスの起業を検討されている方には、是非ご覧いただきたい記事となっております。

プロフィール
角田市から丸森町へ移り起業。2017年3月19日、国道349号線沿いの阿武隈川ほとりに「CawaCafe(カワカフェ)」をオープン。オンラインショップも展開しており、自家焙煎の珈琲豆や、丸森町に伝わる「猫神様」の焼き菓子などを販売している。現在は、自動販売機を使った販路拡大事業や、カフェを来町目的にしてもらうための事業を企画中。

丸森町への移転と起業を決めた経緯を教えてください。

丸森町でカフェを開業する前は、クリームチーズの製造販売を行っていました。震災の年に、製造販売ラインが全てストップしてしまったことがあり、実店舗経営の必要性を感じました。その後、縁あって柴田町に実店舗を構えた際には、人口規模と経営は必ずしも比例関係にあるわけではなく、人のいない地域でも、店主の努力次第で経営は継続できるということに気づき、さらに1年後、角田市に予約制のレストランを開業しました。角田市に移った後、「山のガイドツアー」を実施する知人からお弁当の発注を受けるようになり、そのお弁当を配達する際に丸森の国道349号線が通り道となりました。349号線から見えたのは、川幅の広い阿武隈川、景観を縁取る山々、架かる線路、優雅に舟下りを楽しむ人々など、とても豊かな風景でした。そんな日々を過ごしていた頃、丸森に物件を探していた私に、町の自治体職員が空き物件を紹介してくれました。その中の一つが、349号線沿いの阿武隈川ほとり、私が惹かれたまさにその場所だったのです。


開業に向けた土地選びの決め手は何でしたか?

その場所は人通りが少ない場所ではありましたが、豊かな風景は、町外から人を惹きつける力があると考えていました。また、柴田町と角田市での経験から、場所の情報さえあれば人は来てくれるという自信もあり、当時(2012年頃)普及し始めたスマホのマップ機能がそれを後押ししてくれるという予想もありました。
土地選びは、リスク選択が重要だと考えています。例えば、人がたくさんいる場所に出店することで、集客リスクを減らすことはできても、固定費のリスクがついてきます。私の場合、集客はお店の人の力によるものが大きいと考えたため、固定費リスクを回避して集客リスクを選択しました。
開業した後に気づいたのは、丸森町では行政との距離が非常に近いということです。以前、コロナの影響で売上達成が厳しかった際、丸森町の職員さんに相談したところ、すぐに町内メールでお弁当の宣伝をしていただき、それがきっかけで売上に繋がることもありました。丸森町の職員さんは熱い方が多いという理由もありますが、こういった形で、小さい町ならではの特典を受けることができとても心強かったです。

カワカフェに来てもらうための工夫を教えて下さい。

丸森町の文化や地名を使った商品を売り出すことで、口コミやテレビ取材による宣伝を図ったり、阿武隈川の風景を体感してもらうためのウッドデッキをクラウドファンディングで資金調達したりすることで、カワカフェのファンづくりを行ってきました。また、カワカフェには2019年の台風19号の時から店に居つくようになった野良ネコがいます。このネコを“カワヲ”と名付けて飼っていたところ、保護猫の関係団体の方が販売のサポートを行ってくれたり、カワヲのファンの方が訪れてくれるようになりました。
一方、地域のお客様が少ないという課題があり、まだ来店したことのない人や、そもそもカワカフェを知らない人もいました。こういった方々にファンとなってもらうために、町や住民の特徴を整理しながら、カワカフェをどうやって使ってもらうのがいいかを考えました。丸森町の観察を通じて、ハレの日に訪れるようなお店が少ないという特徴や、「この町には何もない」という地域の方の声をきくことがありました。これらの情報をもとに、ハレの日に訪れるような場所に対するニーズが少ないということ、人々が町外へ出る動機が都会の魅力であるという予測を立てました。この予測をもとに、カワカフェを地域のお客様が普段使いすることができ、なおかつ皆さんが都会で求めているような商品を提供できる場所にして行く必要があると判断しました。

▲クラウドファンディングで調達した資金で建設したウッドデッキ
まとめ

星野さんからお話いただいた中で、起業家にとって特に重要なポイントをまとめます。
1.土地選びの際は、それぞれどのようなリスクがあるのかを整理し、自分にとって適切だと考えるリスクを選択する。
2.開業検討中の地域において、行政と経営者の距離が近いかどうかを調べておく。
3.顧客とストーリーを共有することで、固定客を獲得できることがある。
4.住民視点・よそ者視点・顧客視点など、視点によって求められる価値は異なる場合がある。
いかがでしたか?
カワカフェにはストーリーがあることはもちろんながら、星野さんの豊富な経験や鋭い観察から導き出した合理的な選択があったことが分かりました。これから起業される方におかれましても、星野さんの経験を参考にしていただければと思います。ぜひ、読者のみなさまもカワカフェを訪れてみてはいかがでしょうか?
川のほとりのコーヒースタンド CawaCaffe’ーカワカフェ
住所:宮城県伊具郡丸森町舘矢間山田字小原瀬西12-1
お問合せ:https://thebase.in/inquiry/cawacaffe
Twitter:https://twitter.com/cawacaffe