すみやのくらし 佐藤光夫さん・円さん

宮城県に移住した先輩起業家を紹介するコーナー「私がここで起業したワケ」。
第5弾は、七ヶ宿町で起業した『すみやのくらし』の佐藤光夫さん・円さんご夫婦をご紹介します。
名古屋育ちの光夫さんと仙台育ちの円さんは、縁もゆかりもない七ヶ宿町にIターンして28年。炭(白炭)や炭パウダー入りのお菓子・パン等の製造販売など自然に寄り添った暮らしや事業を展開するお二人に、起業に対する想いや宮城県で起業した理由についてお話をお伺いしました!

プロフィール
宮城県七ヶ宿町に移住し、炭(白炭)や炭パウダー入りのお菓子・パン等の製造販売などを行う。「やさしく なかよく 生きるために。やさしく なかよく 暮らすために」をコンセプトに、自然に寄り添った暮らしや事業を展開する。ここでの暮らしをシェアしたいという想いから火・炭に親しむ体験施設「Charcoal-BASE」をオープンするも、コロナ禍の影響で一時休止中。コロナ禍でも七ヶ宿町やすみやのくらしの季節を味わってほしいと、2022年2月に「すみやのくらしの季節のクッキー缶」の販売を開始する。

すみやのくらしでは、どのような事業を展開していますか?

光夫:すみやのくらしでは、3つの事業を展開しています。
1つ目は、炭(白炭)の事業。七ヶ宿町の炭焼名人・佐藤石太郎氏との出会いから、炭焼きの仕事を始めました。燃料用白炭を仙台市内の炉端焼きの飲食店などに卸したり、オンラインショップで販売したりしています。
2つ目は、炭パウダー入りのお菓子・パン等の製造販売事業。七ヶ宿町は福島の原発に近いこともあり、震災後健康への影響に不安がありました。炭にはデトックス作用があるため、家族で毎日スプーン1杯の炭パウダーを食べ始めました。しかし、粉薬のようだったので子ども達にとっては食べにくく、家庭料理(ピザ、餃子、お菓子など)に入れはじめたんです。それを家族や周りの人たちにも食べてもらったところ好評で、2011年の七ヶ宿町主催の地場産品コンテストに炭パウダー入りクッキーを出品。すると最優秀賞を受賞することができました。そこから町のサポートを受けて商品開発を進め、2013年から炭パウダー入りお菓子、最近はパンの販売も始まりました。現在は、オンラインショップで販売する他、イベント出店などを行っています。
3つ目は、火・炭の体験事業。炭の可能性や需要を広げたいと思い、2020年にクラウドファンディングを利用して、火・炭のある山の暮らしを実験・発信する拠点「Charcoal-BASE」を建設しました。そこでは炭を使った料理や炭出し見学、ワークショップ等をといった体験コンテンツを提供しています。しかし、コロナ禍ということもあり現在は一時休止中です。


なぜ、起業する場所として宮城県七ヶ宿町を選びましたか?

光夫:私たちは前職である自然に関する書物を発行する出版社で出会いました。お互い自然にやさしいライフスタイルに関心があったこと、妻が持つアレルギーを薬ではなく食べ物や暮らしで改善したかったことから「2人で山で暮らそう」と決めていました。妻の実家が仙台市にあったため、東北、中でも宮城県を中心に移住先を調べました。
当時は、山の仕事と言えば森林組合というイメージがあり、電話帳で調べては見学訪問を繰り返していました。その見学先の一つとして七ヶ宿町を訪れ、炭焼き名人の佐藤石太郎氏に出会います。私は石太郎氏の目を見た瞬間に、「ここだ!」というインスピレーションが湧き、妻に相談したらここでいいんじゃないと言ってくれたんです。
このように、様々な地域を比較して決めたというよりもご縁や直感を重視して移住先を決めました。移住直後は、私は森林組合と炭焼きの仕事を、妻は町内でアルバイトをしながら生計を立てていました。


お二人は夫婦で起業されていますが、夫婦ならではの良かったこと、大変だったことを教えてください。

円:私たちは夫婦で仕事をしていますから、ピンチの時でもお互いに助け合ったり、支え合ったりできることが夫婦で仕事をする強みだと感じています。以前、お客様からのハードルの高い要求に応えようと自分自身を追い詰めてしまった時期がありました。しかし、夫婦だからこそ夫は理解し、応援してくれたと思っています。
逆に大変だったことは、助けを求めすぎると甘えになってしまうということです。仕事に対するスタンスとして、大きな方向性は一緒でも、細部の仕事のやり方や、やりたいことに違いが生じることはありました。ビジネスとしてコミュニケーションをとりたい場面と、家族としてコミュニケーションをとりたい場面があるので、そのバランスを保つのが難しいです。
ただそこに、私たちの事業に想いを添えてくれる仲間(第三者)が加わるととても良いバランスになります。協働してプロジェクトを進めることによって、客観的な意見を聞いて冷静になれますし、仲間たちに背中を押してもらうことが多々あります。そういった仲間たちには感謝しています。


今後の展望を教えてください。

円:私は「すみやのくらし」の「くらし」の部分を、今以上に拡大させていきたいです。今はお菓子・パンの製造販売や出張カフェなどを中心に行っていますが、より広く、私たちの自然に寄り添ったライフスタイルを皆さんにシェアしていきたいです。例えば、暮らしの中で使える本当に良いモノをセレクトして販売するなど。私たちのライフスタイルに共感してくださる皆さんの暮らしに役立つ情報をシェアしたいなと思います。

光夫:私は「すみやのくらし」の「炭」の部分を極めていきたいと思います。自分の炭焼きの技術を磨き「文化勲章を受賞する」といった目標はもちろん、炭の可能性を広げる実験・体験コンテンツにも力を入れ、炭に触れる人を増やしていきたいです。火を見つめると、自分に向き合い深呼吸できるような感覚があると思います。忙しなく日々を過ごしている人々にそのような時間や体験を提供し、深呼吸して自分の本質に向き合える人が多い社会にしたいと願っています。

これから起業したい人に向けて一言メッセージをお願いします。

光夫:「絆徳経営」という言葉をご存知ですか?私も最近知りました。簡単に言うと、「理念」と「経済合理性」と「相手にとって良いこと」を両立させる3方よしの経営の考え方です。儲けのことばかり考えるのではなく、企業の信念に沿ってお客さんに良いことをすることにより、自然とずっと一緒にいられるようになり、経済も循環していきます。綺麗ごとではなく、今後この考え方が主流になっていくと思いますから、これから起業する方は「絆徳」を意識した経営を実践されることをおすすめします。

円:「自分が本気でワクワクできること」で起業することをおすすめします。私たちは「現実をつくる力」があると思っています。最初から「無理」と思っているといつまでも実現できませんし、反対に「できる!」とワクワクしながら強く願っていると実際に実現されます。私もこれまでそういう経験をたくさんしてきました。自分では気がつかなくても一人一人素晴らしい個性を持っているはずですから、それを見つけ出し、自分が心から喜んでできる仕事で起業すると良いと思います。
シェアしたいなと思います。

いかがでしたか?
28年間共に暮らし、共に仕事をされているお二人の言葉からは、互いへの感謝と敬意を感じました。そんなお二人は、2022年2月から「すみやのくらしの季節のクッキー缶」の販売を開始します。コロナ禍でも七ヶ宿町やすみやのくらしの季節を味わえる商品となっていますので、ぜひ読者のみなさまも購入されてみてはいかがでしょうか?
すみやのくらし
住所:宮城県刈田郡七ヶ宿町字侭ノ台100-2
電話:0224-37-3156
メール:info@hakutan7.com
ウェブサイト:https://sumiyanokurashi.com/